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Mar 05, 2022
2:40 am

軍事力と金の力

2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻し始めてほぼ10日間が経過しようとしている。こ10日間でプーチンに対する世界の認識はガラリと変化し、多くの人々が、彼はもはや策略に長けたリアリストではなく、現実を認識できない狂信的なリーダーだと思い始めている。ただ、この数年でプーチンの人格が根本的に変化してしまったというよりは、彼の歩んでいる道は、言葉の力を信じず、軍事力と金の力のみを信じて生きてきた人物のたどる末路だと考えた方がよりわかりやすいかもしれない。

言葉の力を信じないリーダーは、彼の周りに自分と敵対したり、あるいは自分のやり方に反対する人物を配置できない。彼は自分の言った意見が(たとえそれが間違っていても)そのまま受け入れられ、歴史に残ることを望んでいるため、自分に反対する意見を聞き入れて妥協したりすることはできないし、あるいはまた、どちらが正しいかを判断できないままに議論を続けながらも、最終的には自分のものであれ相手のものであれ、正しい言葉が残るであろうというような楽観的な見通しを持つことができない。彼は自分の言うことにそのまま唯々諾々と従う取り巻きを求め、それを得るために個人的な資産の増大と軍事力の掌握に力を注ぐ。彼は金の力と軍事力を背景にすれば、大抵の人間が自分の言うことを聞くことを知っているのだ。

プーチンが最終的に手に入れたのは、自分の言った言葉がたとえ間違っていてもそれに従う取り巻きと、そして自分の頭で考えずに自分の命令に従う兵士たちである。だが、そのような取り巻き連中による政治や外交がどれほど無能なものであるか、そしてまた、プーチンの命令に従うままに行動する軍隊がどれほど愚昧な戦略的失策を犯すかは、日々明らかになってきた。